DESIGN EYE|第8号
看板・広告・ホテルの部屋から考える、色が与える印象
「きれい」の先に、誰かの狙いが見えてくる。
目次
- 世の中は、こんなに色であふれていた
- 同じ色なのに、なぜ見え方が変わったのだろう
- 看板、広告、テレビ、そしてホテルの部屋
- 偶然そこにある色は、意外と少ない
- 色の印象は、一色ではなく「組み合わせ」と「場所」で決まる
- ホームページの色も、最初に名乗っている
- 明日、目に入った色に「なぜ?」をひとつ
- MIMOLA EYE
- 関連記事
世の中は、こんなに色であふれていた
Webデザインの仕事を始めて、
あらためて気づいたことがあります。
世の中は、色であふれている。
街の看板。
雑誌の広告。
テレビの画面。
もちろん、Webサイトも。
どこを見ても、色があります。
色には、昔から敏感なほうでした。
けれど、それまでの僕は、
「きれいだな」
「印象的だな」
と感じたところで、止まっていました。
今は、少し違います。
なぜ、この色なのか。
この配色は、何を狙っているのか。
つい、そんなことを考えてしまう。
すると、いつもの街の見え方が変わってきます。
これが、とても楽しい。
ただ、困ったこともあります。
ホテルの部屋に入っても、
壁の色、照明の色、カーテンの色について、
あれこれ考えはじめてしまうのです。
せっかくの旅先なのに、
どうにも気が休まりません。
同じ色なのに、なぜ見え方が変わったのだろう
看板の色が変わったわけではありません。
変わったのは、見ている僕のほうです。
では、僕は何を見るようになったのか。
たぶん、色そのものではなく、
その色を選んだ、誰かの意図なのだと思います。
以前は、目に入った色を、ただ受け取っていました。
好きな色。
落ち着く色。
少し派手だと感じる色。
そこには、自分の好みがありました。
でも今は、その色の向こう側を想像します。
なぜ、この場所に、この色なのだろう。
ほかの色では、いけなかったのだろうか。
もっと目立たせたかったのか。
それとも、あえて目立たせたくなかったのか。
色を見るというより、
色を選んだ理由を探している。
そんな感覚に近いのかもしれません。
不思議なものです。
色そのものは、何も語りません。
それなのに、その色を選んだ人の考えが、少しだけ見えてくるような気がするのです。
もちろん、本当の理由はわかりません。
僕が勝手に想像しているだけかもしれない。
でも、答えがわからないからこそ、
考えることが面白いのだと思います。
看板、広告、テレビ、そしてホテルの部屋
たとえば、街の看板。
遠くからでも目に入る鮮やかな色があります。
一方で、周囲の建物になじんで、近づいて初めて存在に気づくような、控えめな色もあります。
前者は、何とかして気づいてほしいのかもしれません。
後者は、強く主張しないこと自体が、その店らしさなのかもしれない。
どちらが優れているという話ではありません。
その場所で、誰に、どんなふうに見つけてもらいたいのか。
色の選び方には、そんな違いが表れているように思います。
広告も同じです。
たくさんの情報が並ぶ中で、思わず目が止まる色があります。
反対に、やわらかい色を重ねて、ゆっくり見てほしいと誘っているような広告もあります。
目立つことが目的なのか。
心地よさを伝えたいのか。
それによって、選ばれる色も変わるのでしょう。
テレビを見ていても、似たことを感じます。
画面全体の色が変わるだけで、
同じような場面なのに、にぎやかに感じたり、静かに感じたりする。
色は、何かを説明する前に、
その場の空気をつくっているのかもしれません。
そして、ホテルの部屋。
ここが、僕にとって少し困った場所です。
本来なら、ゆっくりくつろげばいいのに、つい壁の色を見てしまいます。
なぜ、この色なのだろう。
もう少し温かみのある色では、だめだったのだろうか。
照明の色にも目が向きます。
明るさだけではなく、その光によって壁や家具がどう見えるのか。
さらに、カーテンの色。
壁に合わせたのか。
それとも、部屋全体の印象を引き締めるために、少し違う色を選んだのか。
そんなことを考えているうちに、
部屋の中の色が、すべてつながって見えてきます。
落ち着くための部屋なのに、
僕の頭の中だけは、なかなか落ち着かない。
でも、その部屋がどんな気持ちで過ごしてほしいと考えてつくられたのか。
色を通して想像する時間は、案外楽しいものです。
偶然そこにある色は、意外と少ない
街を歩いていて、ふと思います。
人がつくったものの色は、
いったい誰が決めているのだろう。
看板の色。
建物の外壁。
お店の入口。
商品のパッケージ。
そこにある色の多くは、
誰かが選んだ結果なのかもしれません。
目立たせたい。
安心してほしい。
高級に感じてほしい。
親しみを持ってほしい。
そんな思いが、色になって表れている。
もちろん、すべての色に深い意図があるとは限りません。
材料の都合もあれば、使える色の制約もあるでしょう。
ただ、何気なく見ていた風景の中に、誰かの選択が積み重なっている。
そう考えると、街そのものが、少し違って見えてきます。
一方で、誰も選んでいないのに、美しいと感じる色もあります。
たとえば、紅葉。
赤や黄色、緑が入り交じる風景を見て、
配色が悪いなどと考えることは、あまりありません。
自然の中には、人が意図して組み合わせたわけではないのに、心を動かされる色があります。
もしかすると、僕たちが美しいと感じる配色の多くも、そんな自然の組み合わせから、どこかで学んでいるのかもしれません。
誰かが選んだ色と、誰も選んでいない色。
その間にあるものを考えるのも、
また面白いのです。
色の印象は、一色ではなく「組み合わせ」と「場所」で決まる
「好印象を与える色は何色ですか?」
デザインの仕事をしていると、こんな問いについて考えることがあります。
でも、僕には、ひとつの正解があるようには思えません。
同じ青でも、白と組み合わせるのか、黒と組み合わせるのかで、ずいぶん違って見えます。
明るい場所で見るのか、暗い場所で見るのかによっても、受け取る印象は変わります。
鮮やかな色が、元気に見えることもあれば、少し落ち着かなく感じることもある。
控えめな色が、上品に見えることもあれば、物足りなく見えることもある。
そして、それは見る人によっても違うのでしょう。
だから、色だけを取り出して、
これは良い色、これは悪い色と決めることには、少し違和感があります。
大切なのは、色そのものよりも、
その色が置かれている場所なのかもしれません。
誰に見てもらいたいのか。
そこで、何を感じてほしいのか。
にぎわいを伝えたいのか。
静けさを感じてほしいのか。
あるいは、簡単には近づけないような、特別な存在でありたいのか。
そうした思いが先にあって、
色や配色が選ばれていく。
もしそうなら、デザインとは、きれいな色を組み合わせることだけではないのでしょう。
色を通して、相手との距離を考えること。
そんな見方もできる気がします。
印象に残る色が、必ずしも強い色とは限りません。
周囲が鮮やかな色であふれているとき、
静かな色のほうが、かえって心に残ることもあるのですから。
ホームページの色も、最初に名乗っている
これは、ホームページにも当てはまります。画面を開いたとき、文章を読み始める前に、まず色が目に入ります。明るい配色なのか、落ち着いた配色なのか。余白の中に色が少しだけ使われているのか、画面いっぱいに色が広がっているのか。それだけで、その会社に対して、何となく感じるものがあります。
第6号「人を見る前に、字を見てしまう。」で考えた文字の話と、少し似ています。文字の形が言葉を読む前に何かを伝えているように、ホームページの色も、会社の説明を読む前に、すでに何かを伝えている。コーポレートカラーも、単なる飾りではなく、その会社がどのように見られたいかを表す、ひとつの自己紹介なのかもしれません。
もちろん、色だけで会社の価値が決まるわけではありません。ただ、まだ何も読んでいない人に、どんな第一印象を届けているのか。自分の会社のホームページを、そんな目で見直してみるのも面白そうです。
明日、目に入った色に「なぜ?」をひとつ
明日、いつもの道を歩くとき。
ふと目に入った看板の色に、
小さな疑問を持ってみる。
なぜ、この色なのだろう。
手に取った商品のパッケージでも、同じです。
なぜ、ここだけ違う色なのだろう。
なぜ、こんなに控えめな配色なのだろう。
自分の会社のホームページなら、
なぜ、この色を選んだのだろう。
もしかすると、そこには、はっきりとした理由があるのかもしれません。
あるいは、ずっと使ってきたから、というだけかもしれない。
どちらでも、いいのだと思います。
理由を考えてみること自体に、
新しい発見がある気がするからです。
これまで「きれい」で終わっていたものが、
「なぜ、きれいに感じるのだろう」に変わる。
ほんの少し、見方を変えるだけ。
それだけで、いつもの風景の中に、
今まで気づかなかったものが見つかるかもしれません。
MIMOLA EYE
色の理由を考えるようになって、
ホテルの部屋でも気が休まらなくなりました。
壁を見ても、照明を見ても、カーテンを見ても、
つい、誰かの考えを探してしまう。
少し困った習慣です。
でも、それ以上に、
世の中の見え方が変わったことが楽しいのです。
世界は、誰かが選んだ色でできている。
もちろん、すべてではありません。
それでも、街のあちこちに、誰かが選び、迷い、決めた色がある。
そう思うと、何気ない風景にも、少しだけ興味が湧いてきます。
色の理由が、いつもわかるわけではありません。
わからないまま、想像することもあります。
それでいいのだと思います。
もし、明日から何かの色が少し気になりはじめたら。
僕と同じように、ちょっとだけ気が休まらなくなるかもしれません。
でも、その小さな困りごとも、
きっと悪くないものです。
そんな、少し困った楽しさを、
分け合えたらと思います。
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