CITY

なぜ、この店には入りたくなるのか。

なぜ、この店には入りたくなるのか。

街を歩いていると、なぜか気になる店があります。「入ってみようかな」と思う店。反対に、なんとなく足を止めるけれど、そのまま通り過ぎてしまう店もあります。何が違うのでしょう。看板のデザインでしょうか。外観でしょうか。照明でしょうか。もちろん、それもあります。でも、それだけではないような気がします。

目次

  1. 店は、街の一部でもある
  2. 「馴染む」ということ
  3. でも、街の中で「浮いている店」も気になる
  4. 「馴染む」と「浮く」は、どちらが正解なのか
  5. 足を止める理由は、ひとつじゃない
  6. 街を歩くとき、店だけを見ない

店は、街の一部でもある

僕は、店のデザインを見るとき、その店だけを見ることはあまりありません。その店が、どんな街にあるのか。周りにはどんな建物があって、どんな人が歩いていて、その通りにはどんな時間が流れているのか。そこまで含めて見ると、店の見え方が変わってきます。

古い建物が残る通りに、昔からそこにあったような店がある。派手な看板ではないのに、なぜか違和感がない。「この街には、この店が似合うな。」そんなふうに感じることがあります。これは、店のデザインだけで生まれるものではありません。街との関係の中で生まれるデザインです。

「馴染む」ということ

街に馴染んでいる店には、不思議な安心感があります。建物の色。看板の大きさ。文字の雰囲気。入口のつくり。照明の明るさ。ひとつひとつが、周りの風景と大きくぶつからない。だから、「デザインされている」ということを強く意識しないまま受け入れられる。第1号で書いた、「目立たないデザイン」にも少し似ているかもしれません。そこにあることが自然になる。それも、ひとつのデザインです。

でも、街の中で「浮いている店」も気になる

一方で、街の雰囲気とは少し違う店があります。色が違う。形が違う。看板が大きい。あるいは、建物そのものが周囲とまったく違う。そんな店を見ると、「なんだろう?」と思って、思わず足を止めることがあります。これもまた、デザインの力です。周りと違うから、見える。街の中にある「違和感」が、人の視線を引き寄せることがあります。

「馴染む」と「浮く」は、どちらが正解なのか

ここが面白いところです。馴染んでいるから良い。浮いているから悪い。そんな単純な話ではありません。老舗の街なら、街の歴史を感じさせる店が似合うかもしれない。一方で、新しい店があえて周囲と違うデザインをすることで、街に新しい景色をつくることもあります。

大切なのは、その店が、どんな街の中に立っているのか。そして、その街の中で、どんな存在になりたいのか。

そこを考えることなのだと思います。

足を止める理由は、ひとつじゃない

僕たちは、店に入る前から、たくさんの情報を受け取っています。「なんとなく好き。」「ちょっと気になる。」「ここ、入りやすそう。」「なんだか面白そう。」言葉にする前に、すでに何かを感じています。その感覚をつくっているのは、看板だけではありません。街との距離。建物との関係。入口までのアプローチ。光。音。人の気配。いろいろなものが重なって、「入ってみたい」という気持ちにつながっています。

街を歩くとき、店だけを見ない

今度、街を歩くとき。気になる店を見つけたら、少しだけ周りも見てみてください。隣には何があるのか。向かいには何があるのか。その通りは、どんな雰囲気なのか。そして、「この店がここにある理由は何だろう?」と考えてみる。そうすると、いつもの街が少し違って見えてきます。街と店がぴったり重なっているときも。少しずれているときも。ふと足を止めた、その瞬間に、デザインが見えてくることがあります。


Mimola Eye

街には、長い時間をかけてつくられた風景があります。そこに、新しい店がひとつ加わる。馴染むのか。あえて違うものになるのか。どちらを選ぶにしても、その店は「街の中」に存在します。だから僕は、店のデザインを考えるとき、店だけを見ないようにしています。その店が、どんな街の中に立つのか。その街の人に、どんなふうに受け入れられるのか。デザインは、ひとつの建物や看板をつくることだけではなく、その場所との関係をつくることでもある。そんなふうに思っています。


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